いわずと知れた大自然の宝庫、北海道。特に夏は、次から次へと出会える美しい景色に大感動のドライブが楽しめる。少し前のことにはなるが、私が体験した約2,000キロに及ぶロードトリップについて、今回は湖に焦点を当てつつ紹介したい。それでは出発、まずは札幌から稚内へ!

いきなりだが、北海道はとっても大きい。すべてを紹介していたら超長文になるので、省略できるところはどんどん省略していきたい。ということで、稚内までは内陸に寄り道することをおすすめする。海岸線にでる前に当別町方面へ入っていくと、数々の美しい田園風景に出会える。よくわからない道に入ってしまうこともあるので、時間に余裕をもってドライブしよう。写真をお見せしたかったが、車を止めれなかったのだろう。一枚もなかった⋯⋯。

Drive the Ororon line in Hokkaido
Deer in Wakkanai, Hokkaido

そして、この道中の一番の魅力は、稚内までの海岸線「オロロンライン」。特に苫前辺りからが最高で、アップダウンの素晴らしい景色も、利尻富士を左に見ながらの直線道路も、思わず「ビューティフル〜」と一人はしゃぎながらのドライブになるはずだ。北海道を数日車で旅するとなると、大抵の人は家族や恋人、友達と行くのではないかと思うが、この地を一人で旅する変わり者にも十分おすすめしたい。私は一人テンションマックス! 共有する人がいなくとも最高である。

稚内の町には、普通に堂々と鹿が歩いているが、その姿は、近所の家のピンポンでも鳴らしそうな勢いで微笑ましい。野生動物にたまらなく惹かれる私は、しばし鹿の行く末を眺めながら、さまざまな想像を掻き立てていた。稚内は寂れた町だが、この時が止まった感じ、結構好きである。

Road to Lake Saroma in Hokkaido
Sunset on Lake Saroma, Hokkaido

次の日は、稚内から網走へと向かった。今回の主役「湖」第一弾は「サロマ湖」である。幌岩山の頂上に位置する展望台へは、細い砂利道のオフロードを走っていくのだが、この時点でワクワクする。緑のトンネルを抜けた先にある駐車場から、さらに階段を上って見晴らし台へ。いやはや、一発目からかなりの絶景。サロマ湖周辺に広がる丘陵地帯に知床連山、砂州の奥にはオホーツク海と、どこを切り取っても美しい。

しばらくこの景色を独り占めしたあとは、下からのサロマ湖を味わいに「ワッカ原生花園」へ。ここは、砂州に広がる海浜植物の一大群生地である。アイヌ語で真水を意味するワッカ。サロマ湖やオホーツク海が塩水にもかかわらず、真水が湧き出る場所があるというのだから驚きだ。この場所では人生初? の不思議な体験をしたのだが、このことはまた別の機会に書くとして、ここでは、サロマ湖に沈む夕日も堪能してほしい。湖面に輝く光が幻想的で、静かな波音が別の世界へと連れていってくれる。

夜が明け、この日は知床方面へ。ちなみに網走には「博物館・網走監獄」があり、ここは勉強になることも多いので寄っていこう。また、知床までの道中に「天に続く道」という一本道がある。北海道には、このようなまっすぐに延びる道がたくさんあるが、なかでもここは素晴らしい。展望台から見える景色も最高である。

「知床五湖」は、言わずと知れた観光地なので、今回、説明は不要だろう。知床は世界遺産にも登録されており、五湖以外にもたくさんの見どころが点在しているが、個人的には「フレペの滝(乙女の涙)」と「カムイワッカ湯の滝」が、たどり着くまでの道中含めて印象に残っている。知床は美しい。そして、知床の主役は動植物だ。この地を訪れるときは、必ずお邪魔する気持ちを忘れないでほしい。

Shiretoko Pass in the fog, Hokkaido

知床を満喫した次の日は、334号線を走り羅臼へと抜けていく。途中、知床峠を見渡せる展望台があるが、残念ながらこの日は霧。うっすらどころかまったく見えず、晴れる気配はなし。ライトをつけ、対向車に気をつけながら運転を再開する。羅臼の町を右折し、海岸線を走っていくと左に入る道があり、この先に、この日の目的地「野付半島」が待っている。

野付半島は、野付湾を囲むように延びる細長い半島のこと。漂砂の堆積により形成されており、湾とはいえ静水域のため、湖のように静かな時間が流れている。鳥獣保護区に指定されているだけでなく、トドワラやナラワラの立ち枯れた原生林が示すように、そこにはどこか忘れ去られた時間が存在する。

さらに野付半島は、砂の流出と地球温暖化の影響により、近い将来、消えて失くなることが危惧されている。すでにトドワラも減少しており、次にここを訪れるときには幻と化しているかもしれないのだ。さて、野付半島の魅力について書いているとその先に進めないので、ひとまず次へと向かうことにしよう。来た道を戻り244号線を左折、釧路方面へ。厚岸町の鮨屋に立ち寄り、この日は終わりとする。

翌日は、しとしと朝から雨。釧路湿原が見渡せる「細岡展望台」に寄り道しつつ、北上して「摩周湖」をめざす。途中から土砂降りの雨に変わっていたが、第三展望台に到着すると雨は上がり、屈斜路カルデラの方からさーっと霧が晴れていく。時間にして20分くらいだろうか。徐々に日差しが戻り、みごとな摩周ブルーに立ち会うことができた。それはそれは神秘的で、湖の底に吸い込まれていくかのようだった。

Kaminoko Pond in Hokkaido
Atsanupuri in Hokkaido

また、摩周湖の近くの森には「神の子池」と呼ばれる場所がある。ここは到着した瞬間に、大量の虫がもの凄い勢いで車の周りに集まってくる。ここでもすぐに雨は上がり、到着を待たれていたかのように光が差していく。その池はどこまでも青く透明で、神がかっているとしか言いようがなかった。そして車に戻ると、また雨がぱらぱら降りだした。

このあたりは、本当に不思議なところが多い。硫黄山とも呼ばれる活火山の「アトサヌプリ」は、剥き出しになった岩から轟々と噴き上がる噴煙と、硫黄の結晶により黄色く染まった山肌が、青い空と相まってとてもアーティスティック。ボコボコと熱湯が湧き出る孔が至る所にあり、大地のエネルギーを直に感じることができる。近くの川湯温泉の硫黄泉は、このアトサヌプリが源泉。温泉好きの人は寄っていくとよいだろう。

Lake Kussharo in Hokkaido

さらに、ここから15分ほど車を走らせると、国内最大のカルデラ湖「屈斜路湖」がある。冬の全面結氷した鏡のような光景を画像で見たことがあり、今回は夏だが楽しみにしていた。冬の美しさとはまた違う幻想的な光景がそこにはあり、霧が去っていくと同時に、空や雲の動きが湖面を通して映し出されていく。静かな波の音と、遠くに聞こえる子供の声。どうしたものか北海道⋯⋯美しさで動けなくなる場所が多すぎる。

Bokke in Lake Akan, Hokkaido
Deer inhabiting Lake Akan in Hokkaido

後ろ髪を引かれる思いで次に向かったのは、まりもの生息地「阿寒湖」。ここでは「ボッケ」と呼ばれる泥火山を湖畔の周辺に見ることができる。火山ガスとともに地下からボコボコと湧き上がる泥と、その周辺を覆う深い森。このちょっと危険な環境下で暮らす鹿の親子にも出会うことができた。間違えて熱い泥に足を突っ込み、慌てて森の中へと消えていく小鹿の姿や、人間に興味を示しているのか、顔をちょこちょこ出してくる兄弟の姿、そして、側で見守る母親の姿にほっこりであった。

さて、私の2,000キロに及ぶロードトリップはこの先も続くが、今回のドライブで出会った湖についてはここで終わり。北海道には、まだまだ魅力的な場所がたくさんある。北海道は美しい。そして、大自然は人間に生きるエネルギーを与えてくれる。この計り知れない神秘に触れることは、どんな時代においても必要なことだと私は思う。