カステラは、鳥卵を泡立てて小麦粉、砂糖(水飴)を混ぜ合わせた生地をオーブンで焼いた菓子の一つである。

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うーん、実にシンプルである。

長崎本土での滞在中、毎日朝ごはんに食べていたカステラ。室町時代の終わりに、交易で訪れたポルトガル人から「カスティーリャ王国(スペイン)のパン」と紹介されたことが、日本での始まりといわれている。スペインの焼き菓子「ビスコチョ」が起源とされているが、底についた双目糖が特徴の長崎カステラは、1624年に創業した福砂屋さんが元祖とのこと。

View of Nagasaki

江戸時代の書物を中心に、カステラに纏わるさまざまな逸話も残されているようだが、「宣教師が布教のために振る舞った」「茶会の菓子として提供された」など、長崎から京都、江戸へと伝わっていく様子がうかがえる。ただ、やはり本場はここ長崎。というのも、現在の日本におけるカステラは、レシピの改良を重ねて和菓子として進化したもの。この時代は砂糖がまだまだ貴重品だったため、手に入りやすい環境の長崎から発展していくのは当然のことである。

そして、カステラの魅力の一つに挙げられるのがパッケージの可愛さ。箱や包み紙に描かれた文字やデザインがレトロで、言葉の意味は違えどどこかハイカラさんなのである。それもあり、日々の暮らしの中で自ら積極的に購入することはほとんどないにもかかわらず、なぜかお土産でいただくと嬉しいカステラ。結核などの消耗性疾患に対する栄養剤として使用されていた時代もあるとのことで、それだけ栄養価が高いということは、一日の始まりに、はたまた疲れたときのエネルギー補給にも最適である。

Castella of Bunmeido in Nagasaki

また、カステラのお供に欠かせないのがコーヒーの存在。今回は、取材で移動するのでホテルに滞在していたが、家具・家電付きのアパートメントを借りて、日本と欧州を行き来しながら普段暮らしている私は、その部屋に置かれた器具を使ってコーヒーを淹れている。日本はお茶文化ということもあり、ティファールなどの電気ケトル以外は用意されていないことが大概なので、毎回ドリップバッグコーヒーを購入する。

欧州はさまざまで、フランスはカフェポッドのエスプレッソマシンが多く、ドリップコーヒーメーカーの場合もある。カプセル式コーヒーメーカーに当たるとラッキーで、さらにネスプレッソだとテンションアップ! カフェポッドとは、一杯分のコーヒー粉がパックされた平べったいポッドのことで、カプセルみたいにエスプレッソマシンにセットして抽出する。ドリップコーヒーの場合は、コーヒーショップで豆を挽いてもらう楽しみがさらに増える。

Direct Fire Espresso Maker in Sevilla apartment

イタリアやスペインでは、直火式エスプレッソメーカーを置いているアパートメントが多く、弱火でじっくり抽出していくのだがこれがなかなか面白い。ポコポコと変化する音を聞き逃さないよう、朝からじーっと耳を澄ませている。強火でやれば早いのだが、弱火でじっくり淹れる方が美味しいので、他のコーヒーメーカーにくらべて少々時間はかかるけれど、私はこの直火式をセットする時間そのものが好きである。

朝食のコーヒーには日本だと食パン、フランスだとマドレーヌを合わせることが多い。イタリアやスペインではなぜかシリアルを食べることが多いので、あとはスーパー次第といったところだろうか。そして今回は、長崎発祥のカステラである。それにしても日本のドリップバッグは本当に優れている。私はカフェなど外で仕事をすることが苦手なので、家でも職場でもあるホテルで消費するコーヒーの量は一日3杯。アパートメントを借りた場合は最低でもひと月は同じ場所に滞在するため、出来るだけ色々なコーヒーを試すようにしている。

View of Nagasaki

さて、今回の滞在中に選んだカステラは「文明堂総本店」「長崎堂」「福砂屋」のお三方。ベーシックな長崎カステラを、すべて本店にて購入させていただいた。どれか一つお気に入りを選ぼうと思っていたのだが、正直、どれも甲乙つけがたい。あえていうなら福砂屋さんだろうか。いや、ブラックコーヒーとの相性を考えると、長崎堂も捨てがたい。文明堂総本店のカステラは品があるし⋯⋯。

これだけシンプルな材料で作られているにもかかわらず、それぞれの店舗ごとに個性があるのも長崎カステラの魅力。今回は断念したが「松翁軒」「岩永梅寿軒」のカステラも食べたかった。長崎にはまた取材で訪れると思うので、また次回の朝食もカステラで攻めたいと思う。