日本の古都として、多くの人々を惹きつける京の都には、三方を山に囲まれた盆地であることから、夏は暑く冬寒い! という欠点が存在する。だが、大抵の物事というのは表裏一体。だからこそ、この欠点の反対側にある美点にフォーカスすると、もともと彩りある京都という町が、さらに魅力あるものへと変化していく。

前回の記事、京都の日常「駄菓子的和菓子」から続く今回は、そんな京都の山に関するストーリー。この三方の山というのはその昔、この地に平安京を建都するにあたってとても重要だった。唐の時代の長安を模してつくられたこと、四神相応という星の信仰に基づいた思想を取り入れていることは奈良の平城京にもいえることだが、平城京は北方の山が低いなど風水的に不十分な点も多かったので、平安京はその点も踏まえてより緻密な設計となっている。

Heian Shrine in Kyoto

四神相応の四神とは、玄武、青龍、白虎、朱雀のことで、天空の四方に輝く28の主たる星を方角ごとに7星つなげると、北の方角には亀、東の方角には龍、西の方角には虎、南の方角には鳥が描かれるというもの。そして、この四神の役目を果たすのが、北の玄武=背後に聳える大きな山、東西の青龍と白虎=丘陵または小高い山、南の朱雀=北の玄武に向かいあう山、または、海、河川、湖沼などの水であり、その条件に当てはまる土地に都を置くこと=風水的に吉とされている。

こうした山や水に囲まれた形状の土地を京都に当てはめると、北の玄武=丹波高地、東の青龍=大文字山、西の白虎=嵐山、南の朱雀=巨椋池となる。現在は巨椋池の干拓により南の朱雀が欠けている状態となっているが、遷都を繰り返していたあの時代に1,000年以上も都が保たれたことを考えると、やはり風水も無視はできないと考えさせられる。

Mount Hiei Trail in Shiga

そして、この京都の三方に位置する山々は、たとえば、比叡山や稲荷山など他の山とも連なっており、そこには「京都一周トレイル」というハイキングコースが設けられている。スタート地点となる麓やコースの途中には、京都を代表する神社仏閣が位置しており、参拝と一緒に自然を楽しむことができるのだ。そんなわけで、京都の日常その②は、神社仏閣の参拝がてらハイキング! である。

前置きが長くなってしまったが、この「京都一周トレイル」のなにが素晴らしいかって、トレイルの入り口や出口をその日の気分や体力に合わせて変更することが可能。標高差も大きくて700メートルほどと、このコースは比叡山を越えるためそれなりに体力は要するけれど、とはいえ全体的には、本当に気軽にハイキングを楽しむことができる。

Mount Daimonji Trail in Kyoto
View of Mount Daimonji in Kyoto

なかでも人気なのが、銀閣寺と南禅寺を結ぶ大文字山コースで、山頂から見る眺めが素晴らしい。銀閣寺から五山送り火で灯される火床まで行き、折り返す人が多数だが、個人的には南禅寺または日向大神宮からスタートして、七福思案処→大日山→大文字山の山頂→火床→銀閣寺に下りていくコースがおすすめ。倒木も多いが、木と木が風で重なりあう音や、トトロの世界を感じられる木のトンネルなどワクワクできる。

このトレイルは、伏見稲荷大社と比叡山を結ぶ全長24.6キロの東山コースの一部で、周辺には哲学の道や蹴上インクラインなど有名な観光スポットも多い。私は散策の途中に気分次第で山に入っていけるよう、天気の良い日は動きやすい服にスニーカー、寒さ対策の軽い上着を持って出かけるようにしている。この東山コースのちょっとした距離だけを歩くなら、水やおにぎりは近くのコンビニで調達可能だ。

前回の和菓子の記事でも伝えたが、京都はシェアサイクリングが充実している。私は京都では「PiPPA」のサービスを利用しているが、ポートも多くとても便利。30分単位で110円の料金が発生するので、滞在先の近くで自転車をピックし、たとえば今回なら南禅寺の近くで返却。参拝してそのままハイキングし、銀閣寺の近くでまた自転車をピックというように、これまた本当に気まま! ポートから少し歩く必要はあるが、トレイルの入り口が街中に位置する京都ならではの遊びである。

このように、シェアサイクルを利用して気軽に楽しめるコースを選んでもよいし、この入り口からだと距離があるなと感じたら、別のスタート地点までバスで行き、たとえば三千院と大原だけを歩いてみる。四季折々の自然を堪能したいなと思ったら、神護寺や西明寺にも寄れる北山西部コースに挑戦してみるなど、京都一周トレイルは飽くなきコースなのだ。

太古の時代、この平安京が位置する土地は湖で、ここに都ができる前兆があったわけではない。にもかかわらず、将来有望とされてきた京都盆地。かの聖徳太子も、夢に現れたこの地を訪れて「ここには300年後、長く栄える都ができるだろう」と予言したという。陰陽道を知っていたからこその予測だとは思うが、それほどにきっと、三方の山々に囲まれたこの地を流れる気の良さに感動したのではないだろうか。ということで京都の日常その②は、参拝がてらハイキング!

次回へつづく。