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『人間と青』23. 無音の町

今日、わたしの暮らす町に、音がしない。夕暮れ時のこの町に、音がしない。不思議だ。聞こえてくるのは、風の音だけ。人の声も、虫の声も、鳥の声も、車の音も、ただそこには、生暖かな風が吹くだけで、いつもあるその

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『人間と青』22. 太鼓の音

どんどんと、故郷に鳴り響く太鼓の音。幼き頃を思い出す。懐かしいと感じられる心そのものが、奇跡のよう。このような時が訪れることを、誰が想像できただろう。故郷を去ってはや二十何年。ようやく大人に近づけたのだ

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『人間と青』21. 四国山地

四国山地というのは、なかなか良いものである。それなりに険しいのだが、遠目に見ると穏やかに映ずる。今時分は、山桜が葉桜へと変わり、黄緑、緑と色もさまざまで、太陽によって鮮やかに彩られる。雨が降ったあとに西日

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『人間と青』20. 穀雨の候

若苗に恵みの雨が降る時節となりました。しかし、花冷えは続きます。桜はとうに散ったので、若葉冷えとでもいいましょうか。それはもう少し先でしょうか。日本は田植えの季節、水を張った棚田というのは、美しいものです

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『人間と青』19. 啓蟄

にょろにょろと、冬ごもりから出てきた虫たち。おはようございます。むかで、くも、なめくじ。この虫たちだけは、大きくなればなるほど、田舎で暮らす人間にとって大敵である。啓蟄の時期はとうに過ぎ、地上にはうごめく

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