日本は梅雨の真っ最中。この季節、全国各地で見られる「茅の輪くぐり」は、日本神話のスサノオノミコトに由来する神道儀式の一つで、水無月の晦日に行われる祓の儀式を「夏越の大禊」と呼んでいる。

本殿に向かってまずは一礼。左、右、左の順に、八の字を描くように輪をくぐり参拝に向かう。この儀式により半年間の罪とけがれを祓いきよめ、残りの半年の運気を高められるというが、茅の輪を通してみる本殿は、時空を超えた先にある世界のように感じて気持ちが高ぶる。

Japanese tradition, nagoshi-no-harae
※画像は京都・今宮神社の茅の輪くぐり

日本滞在中の拠点を京都にすることが多い私は、このような日本の風物詩をいつも楽しみにしている。現在は新暦の6月30日を「夏越の大禊」とする神社が多いが、旧暦に合わせて行う神社もあり、出雲大社のように馬蹄形の茅の輪を縄跳びのようにくぐる神事もあるのだから面白い。

最後に儀式の由来となった神話の一説を少し。

ある日の日暮れ、一夜の宿を探す旅人は、裕福な暮らしをする巨旦将来の家を訪ねるが断られてしまう。そこで旅人は巨旦の兄、蘇民将来の家を訪ねる。すると、兄の蘇民は貧しい暮らしにもかかわらず快諾。精一杯のもてなしを提供する。時がたち、ふたたび蘇民の元を訪ねた旅人は、宿のお礼に疫病から身を守る茅の輪を手渡し、腰に身につけるよう伝える。その後、その村で疫病が流行し、村人はみな死んでしまったが、茅の輪を身につけた蘇民の子孫だけは生き延びたというお話。そう、その旅人こそ、スサノオノミコトである。