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『人間と青』149. 犬が見つめてくる

3か月ぶりに再開した犬は当初、記憶が曖昧で、「あれ、この人、あの人よね?」みたいな感じだった。あらゆる匂いをクンクンと嗅ぎ、なんとか記憶の一致を図ろうとしていた。数日前にそれがやっと解けたのか、そこからは

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『人間と青』148. ムードメーカー

わたしの故郷のコミュニティがうまく成り立つのは、ここで生まれ育った、一人のおばちゃんの存在が大きい。彼女は父の従姉にあたる人物で、結婚してからもずっと、ずっとこの地で暮らしてきた。おしゃべりが大好きで、新

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『人間と青』147. 犬仲間のおじいさん

犬と散歩に出かけたら、川の近くで、柴犬仲間のおじいさんに会った。“ひさしぶりだねぇ〜”。おじいさんは嬉しそうだった。このおじいさんの柴犬は、わたしには笑顔を向けるのに、犬にはすごい剣幕で威嚇してくる。どの犬に

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『人間と青』146. またひとつ歳を重ねて

その昔、まだ若かりしころ、それもずっとずっと昔の十代のころ、わたしは二十歳まで生きれば十分だと思っていた。よくある話である。二十歳が近づくと三十歳まで生きたくなった。三十歳になると、早く四十歳になりたいと

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『人間と青』145. 仏さま

今日、仏さまのいる部屋に行ったら、寿命を迎えた百合の花が、その場で息絶えていた。手を合わせる前にひと通り綺麗にしていたら、ここ最近の薄汚れた感情が、少しばかりスッキリするのを感じた。犬がその後ろを小走りで

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『人間と青』143. 車の運転

車を運転すると、気持ちが前を向く。気をつけなくてはならないという絶対的な意識によって、運転だけに集中できるからだと思う。わたしはラジオを聴きながら運転することができない。窓を開けて、外に流れる音だけを聴く

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『人間と青』142. 現実との葛藤

定住先を考えていることは、少し前に書いた。しかし、精神の波がまたやってきたことで、すでに、どこかに移動したくてたまらない。欧米人による欧州旅行フィーバーで、居心地のよい部屋を長期で確保できず、移動の回数が

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