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『人間と青』29. ノイズへの対抗

脳の断片が剥がれ落ちると、急に耐えられなくなる日常の音。わたしはドアを閉め切って、誰かが叩く不快なノイズをすべて消し去る。それでもドアの隙間から入ってくるその音は、又も脳にハサミを入れて、とがった断片を形

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『人間と青』28. 脳の断片

過去の記憶と触れなくてはならなかったこの日、わたしは疲れ切ってしまった。たった一時間で急激に剥がれていく、脳の断片。いつも回避できない何かが不意に現れて、ブレーキを懸命に踏んでも、なにも効きはしない。そし

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『人間と青』27. 初夏

初夏、それは皐月のとき。束の間の、青い空が続くとき。初夏、それは新緑のとき。青々と、葉が風になびくとき。穏やかに見えて、強く照りつける太陽は、命ある魂、精神のみなもと。清らかに流れゆく水は、小さな川から

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『人間と青』26. 犬が可愛い

犬が可愛い、毎日可愛い、朝昼晩、可愛い、何をしても可愛い。どうしたものか、可愛くてため息がでる。可愛くてぶるっと震える。可愛くてにまにましてしまう。毎日のお散歩中の、あの後ろ姿、あのてくてく歩く姿、すばら

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『人間と青』25. 言いなり

ここ最近、犬がさぼり気味である。散歩コースが、ワンパターンなのである。こんなにもたくさんの道があるというのに、犬は最近、地獄の道ばかり選ぶのである。今日も分かれ道で、わたしは何度も説得した。犬よ、そろそ

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『人間と青』24. ずっと遠くに

近所の子供たちが、自転車の練習をしている。小さな頃の記憶がよみがえる。またひとつ自由が増える、いつもより遠くに走っていける、あの解放されたよろこび。大人になった今でも、自転車は自由を与えてくれる。頭で考

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『人間と青』23. 無音の町

今日、わたしの暮らす町に、音がしない。夕暮れ時のこの町に、音がしない。不思議だ。聞こえてくるのは、風の音だけ。人の声も、虫の声も、鳥の声も、車の音も、ただそこには、生暖かな風が吹くだけで、いつもあるその

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『人間と青』22. 太鼓の音

どんどんと、故郷に鳴り響く太鼓の音。幼き頃を思い出す。懐かしいと感じられる心そのものが、奇跡のよう。このような時が訪れることを、誰が想像できただろう。故郷を去ってはや二十何年。ようやく大人に近づけたのだ

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