ポジターノのバス停で
ソレント行きのバスを待っていたら
乗客を乗せた一台のバスが通り過ぎて行った

ここで待ち始めてから20分は経つ
およそ30名が落胆した

10分後、ようやくバスがやってきた
席はほとんど埋まっている
すでにここで待つ人間は60名ほどに増えている

このバスを逃したら
さらに30分は待つことになるだろう

ソレントまでは海岸線をうねうねと
それはそれは激しい蛇行を繰り返す

立ったままあのうねうねを進むのか⋯⋯
わたしの脳裏には最悪のシナリオがよぎる
とはいえ、次のバスもきっと満員
わたしは覚悟を決めた

どんどんぎゅうぎゅうになっていくバス
これ以上は危険だと判断した運転手

わたしは落胆した
目の前で希望を絶たれたのは順に
カップル、男性、わたし、カップル
我々4組は特に落胆した

わたしの前にいた男性は
バスが到着してから小躍りまでしていたというのに

ヒュルヒュルヒュルヒュル〜
会話はせずとも心はシンクロ
皆がほぼ同時にその場へと座った

しかしである
心が折れてから5分後、まさかの次のバスがやってきた
しかも乗客は数組だけ

我々はすぐに立ち上がった
なんてラッキー!
またも心はシンクロ
皆が同時に笑顔になった

次のバスを待っていた30名ほどの乗客は
無事、全員座ることができた
バスの中は幸せな空気に包まれていた

本当にラッキーである
そこでわたしは考えた
ラッキーとは何か?

なぜなら、ひとつ前のバスに乗れた人たちは
立ったままは辛いけど、
あの暑い中また30分も待つのは本当に勘弁
我々はラッキーだ!

なーんて会話を、今頃繰り広げていることだろう

確かに彼らはラッキーである
今、わたしたちが快適にソレントへ向かっていることを知らない限りは⋯⋯