アパートメントの寝室の窓から、朝日に染まるベスビオ山を眺める。ここに到着したときとは太陽の昇る位置が変わっている。朝焼けの色も濃いオレンジへと変化し、夏に向けてより一層強いエネルギーを放っている。そこ
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『人間と青』36. 己を律する
今ここに、奇跡が起きている。もう三十年近く、心から望んできたこと。何度も失敗し、そのたびに怒りや恨みと戦い、何度も傷つき、でも何度も望んできたこと。自らが作ればよいのだと、他人と試みたこと。でも叶わなか
Read More『人間と青』35. もしも雨上がりに晴れたなら
もしも雨上がりに晴れたなら、太陽が地上を照らし、青葉が輝き出すだろう。もしも雨上がりに晴れたなら、地上には虫がうごめき、チョウが空を飛び、花から花へと、幸せを運んでくれるだろう。もしも雨上がりに晴れたな
Read More『人間と青』34. 十四歳からのメロディー
ベートーヴェン「悲愴」第二楽章、十四歳の頃からずっと、わたしに寄り添うメロディー。嬉しいときに口ずさむ鼻歌も、悲しいときに口ずさむ鼻歌も、なんの意識もなしに、どこからともなく流れてくるメロディー。あれか
Read More『マイ・コビッド・ナインティーン』第20回「シェンゲンビザ」
イタリアのロックダウンが一部緩和されたことにより、私はナポリの中央警察署まで行かなくてはならなかった。それには、れっきとした移動のための自己申告書が必要だったので、まずは営業を再開した印刷屋さんを探す
Read More『人間と青』33. 悲しい雨に入り交じる非情
悲しい雨が降るとき、そこには悲しい感情が混ざっている。悲しい雨が降るのではなく、悲しい感情が雨となる。感情の波に揺さぶられて、今、自分がどこにいるのか、心がついていかない。四、五日前の暗闇の世界と、二、
Read More『人間と青』32. 生きとし生けるもの
生きとし生けるもの、それはいつか終わりを迎える。明日なのか、明後日なのか。十年後なのか、二十年後なのか。生きとし生けるもの、それはいつか終わりを迎える。自然死なのか、自死なのか。もし後者だとしても、きっ
Read More『人間と青』31. アイムハイパー
あいむばーっく、わたしははいてんしょん、朝は仕事放棄、よっよ〜。あいむばーっく、わたしははいてんしょん、昼も仕事放棄、るっる〜。「これはわたしの今日の気分である。身体はラップを刻んでいる。かなり危険であ
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