明け方の夢に出てきた海は、不思議な世界だった
穏やかで落ち着くけれど
生きた心地のしない妙な感覚が含まれていた
青く深く高く、それなのに波がなかった
こんなにも深く広く、大きな波が打ち寄せそうなのに
透明のバリアによって静止しているような
限りなく大きな水槽を外から眺めているような、不思議な感覚だった
あの海はどこにあるのだろう?
波打ち際で足を水につけながら周囲を見渡すと
真っ白な砂浜に数名、人が寝転んでいた
その中に一人、知り合いがいた
彼は何か作品を撮っているようだった
でもなぜだろう
ビデオカメラの前には、撮影の妨げになりそうな黒く四角い物体が置かれている
曖昧な挨拶を交わしたあと
わたしはその海に
サラサラした砂のようなものをまいた
そこでわたしは目が覚めた
数時間経った今でも、どこか不思議な余韻に包まれている
あの海には空がなかった