日本各地のさまざまな神社仏閣を訪れていると、ここは気持ちいい! と感じるパワースポットに出会うことがある。きっと自分との相性やその時々の気分が関係するのだろうとは思いつつ、とはいえ何とも言えない素晴らしい空気に感動せざるを得ない場所というのは存在する。

今回紹介する「白山比咩神社」と「氣多大社」も、私のお気に入りパワースポットの一つ。どちらも石川県にあり、前者は旧加賀国に、後者は旧能登国に鎮座している。中心となる金沢からは離れているので、車がないと行きづらいスポットではあるが、鉄道やバスを乗り継いで行くことも可能だ。ということで、まずは加賀国の白山比咩神社から見ていくことにしよう。

Shirayama Hime Shrine in Kaga Ishikawa

白山比咩神社は、石川県南西部=加賀国と呼ばれていた頃の一宮で、現在の白山市に位置している。金沢の野町駅から終点の鶴来駅までは北陸鉄道・石川線を利用し、そこからは30分ほど歩いていくか、コミュニティバスのめぐーるに乗車すると、表参道の入り口近くまで連れていってくれる。白山比咩神社まで直接行くこともできるが、この表参道こそメインであると私は思うので、必ずここを歩いて境内にたどり着いてもらいたい。

古くから霊山信仰の聖地として、石川や福井、岐阜の人々を中心に祈りを捧げられてきた白山。その霊峰白山を御神体としている神社は日本各地に3,000社余りあるといわれているが、その白山神社の総本宮とされるのがここ白山比咩神社である。御祭神は、菊理媛命(ククリヒメノミコト)という女神さま、そして古事記でお馴染みのイザナギとイザナミもともに祭神として祀られている。

白山比咩神社が良縁成就にご利益があるといわれるのは、日本神話に出てくる黄泉国との境界でイザナギとイザナミを仲直りさせたうえ、円満に縁切りさせたのがククリヒメとされる所以であるが、ククリヒメは日本書紀の一書にしか登場しないにもかかわらず、実はイザナギとイザナミの娘だとか、夜見国でイザナミに仕える女神だったなど、いろいろな謎に包まれている。

御前峰や大汝峰などの総称である白山は、富士、立山とともに日本三名山といわれているが、白山が霊峰と崇められるようになったのは、奈良時代に泰澄が登拝したことがきっかけだ。のちに生まれる空海のように、幼い頃から神童として高い能力を発揮していた泰澄は、あるとき夢の中に現れた女神から白山に来るようお告げを受ける。そこで、誰も成し遂げていなかった白山の登拝に成功し、開山することになる。

その白山信仰の、加賀の起点となるのがここ白山比咩神社。境内などの詳しい説明は、足を運んでいただくのが一番だと思うのでここには記載しないが、個人的には今のところベスト20に入るパワースポットだと思っている。なにかご利益を頂戴したとかそういうことではなく、杉や楓の樹木に覆われた白山比咩神社の表参道は本当に気持ちいいのだ。

さて、石川県のもう一つの一宮、能登国の氣多大社についてもこの辺りで触れておきたい。能登国は、現在の能登半島に当たる部分だが、ここは日本の原風景に出会える奥深い半島でもある。そんな日本海に突き出た半島の付け根あたりに鎮座する氣多大社は、加賀藩の前田利家をはじめとする歴代の藩主に崇められてきた。

出雲大社や大神神社の祭神でもある大国主(オオクニヌシ)を祀っており、そのオオクニヌシは出雲から舟で能登に入り国土を開拓したという。スサノオの子孫でもあるオオクニヌシは、日本国をつくった神と伝えられているが、ここでいう国づくりとは、農業や医療の技術を人々に教え、生活を築いて社会を形成したことだといわれている。

Keta Taisha Shrine in Noto Ishikawa

ここ氣多大社は、まずは鳥居を前にしたときに大きな力を感じる。私はスピリチュアルな能力を持っているわけではないが、第六感的な感覚を大切に生きているところがあり、そのような空気を感じたときの心には素直に従うようにしている。もちろん、次に訪れたときに同じように感じるかはまた別の話だが、その時その時に導かれる場所というのはあるはずで、そういう時は何かしらのメッセージが隠されているように思う。

自然と背筋が伸びるような思いで氣多大社の神門をくぐると、「入らずの森」と呼ばれる聖域の入り口にたどり着く。背後に広がる大きな大きな鎮守の森は、加賀藩が保護したことでも知られているが、この聖域にある奥宮へ足を踏み入れることができるのは、大晦日に神事の勤めを担当する神官のみという厳粛さ。そんな神聖なる領域が、2019年から「氣の葉祭」の一環として12月に一般公開されるようになったのだが、これには、気候変動などにより刻々と変化していく原生林の保護の大切さを伝えたい趣旨があるという。

Keta Taisha Shrine in Noto Ishikawa

ちなみに、一般の人々に向けて扉が開かれる前に、神職以外で唯一この森に入ることを許されたのは昭和天皇のみであり、なんと400年以上も神域として守られてきたのだ。スサノオと妻のクシナダヒメの二柱が祀られている入らずの森。その入り口周辺だけをとっても、自然と一体になれるような神聖な空気に包まれている。そして、そんな森の中から流れてくる水のせせらぎは、心と身体の隅々にまでその澄んだ音色を届けてくれる。

国の重要文化財にも指定されている氣多大社は、入母屋造妻入・桧皮葺の屋根がみごとな拝殿と、厳島神社とここでしか見られない両流造りの本殿など、歴史的な建造物としての魅力も見逃せない。氣多大社の周辺には、前田家ゆかりの寺として知られる妙成寺や、中能登町のほうに入っていくと雨の宮古墳群があったりと見どころも多いので、海岸線のドライブもかねて訪れてみてはいかがだろうか。