大きな大きなイブキビャクシンの体に手を当てる
どっしりと構えた根から伝わる長い年月の記憶
わたしの手のひらに、脈々と⋯⋯
ここには祖母の思い出が詰まっている
祖母が祖父の元に嫁ぐまで過ごした、二十何年の月日
その幼き頃の写真には
瓜二つのわたしが残されている
顔だけでなく、むすっとした表情までもが同じで
いつも何かに反発していたのだろう
当時のわたしと重なる
あの写真を見た時から
この密かに歴史ある集落をずっと訪れてみたかった
ちなみに祖母の口癖は、
わたしはお嬢様だったのにこんなところに嫁がされて⋯⋯
である。
最近でこそ祖母は、
早く逝きたいがために祖父が迎えにきてくれないことを嘆いているが
母曰く、祖母は相当に頑張ったと思う。見ていて可哀想だったとのこと
母もまた、同じような運命を辿っている
わたしたち姉妹はお嬢様でも何でもないが、
彼女たちを尊敬しつつも、絶対にこうはなりたくないという強い意志があるように思う
こうなることを察して、自然と皆、結婚していないのかもしれない
初めて訪れた祖母のふるさと
そして、母の思い出とも言える場所
わたしはまた、この地を訪れるのかもしれない
とても美しい場所だった