ジェノヴァにいることに意味を見出せず、
ここはガラッと気分を変えて、チンクエテッレにでも足を延ばそうと考えたのだが、

フィレンツェから来た道を、およそ100kmも戻ることになる

すごく嫌である
わたしは来た道を戻るのが嫌いなのである

せめて2週間くらい経ってからでないと、
たった数日で、しかも100kmもの距離を戻るだなんてありえない

一応、朝早くに起きてはみたものの気乗りしないので、

やめよう、素直にジェノヴァにいよう

昼過ぎまで仕事をして、
この街を、無理にでも掘り下げることにした

フニコラーレに乗って、高台にある終点のリーギ駅まで上り、
急勾配に沿って建つ家々を眺めながら、坂を下っていく

一部、高級住宅地ではあったが、驚くほどのものではない

景色は確かに良いのだが、
終点のリーギまで上る意味はあまりない

むしろ丘を下るにつれて、
港町・ジェノヴァならではの迫力ある光景が見られるようになる

日も暮れ始めたので、
わたしはまた裏道に入り、今度は娼婦たちが商売する通りを歩いてみる

昨日の通りほどの警戒心は感じない

だが何かこう、空気が澱んでいるというか、
この時間はまだ危険ではないし、こういう場所は日本を含むどの国にもあるのだが、

中途半端だからこそ、何かしら悪の温床になりかねない

夕方、この周辺をたった数十分歩いただけで、
警官が束になってアパートメントの一室を尋ねる場面に二度も遭遇

かといって、ディープな街とも言えない

もちろん、わたしが見たものがすべてではないけれど、
移民もどこの国に辿り着くのか、もっと言えばどの地域を選ぶのかで、
その後の運命が結構、分かれるのだと

当たり前のことだけど、イタリア各地で遭遇する彼らを見ながら、
この国だけでもこんなに違うのかと

今日はそんなことを考えた

彼らは、来た道を戻ることはあるのだろうか