夕暮れ時に
どこからともなく聞こえてくる大きな声
窓の外を覗くと
スイカを積んだトラックがやってきた

ナポリに戻ってきてからずっと
なぜかずっと
宇多田ヒカルの『真夏の通り雨』を口ずさんでいたのだけど
その理由が今、わかった

わたしが暮らすエリアは
何もかもが昔ながらの雰囲気で
きっとすごく懐かしかったのだ

それは二年ぶりに戻ってきたからというのもあるけれど
もっと違った
どこかに原風景を見ているような感覚で
昭和の記憶がよみがえってくるような感覚で

だからだったんだ
お昼寝をして目覚めた時の
あの奇妙な感覚に近かったんだ

あの記憶だったんだ
あの夕刻の光が瞼をふわふわさせるような
奇妙で孤独で喪失感のある⋯⋯

あの感覚がずっとどこかでわたしを覆っていたのだ
イタリアにきてからずっと

今、眠りから覚めた気がする